「幸せを語りなさい。
 あなたの苦悩を除いたところで、世界は悲しみに満ちているのだから」
――オリソン・スイート・マードン――







少女は、果てのない草原を歩いて行った。
どこまで続くのか。どこまで行けるのか。
全ては謎であったが、少女は絶望や不安を跳ね除け、どこまでも歩き続けた。

「こんにちは」

少女は背後から突然声をかけられたことに驚き、振り向いた。
――そこにいたのは、金色の髪をたずさえた、とても美しい女性。

「こんにちは。あの…ここがどこだか、教えてもらえますか?」

「――ここはね、世界の何処かなんですよ」

悪戯っぽい笑顔を浮かべながら、美しい女性は答える。
少女が疑問に顔をしかめていると、美しい女性はクスクスと笑いながら

「それでは、私から質問をしていいですね?
 一つ教えますけれど、ここでは一つの質問を聞く度に、一つの質問に答える 義務があるんです」

「はい。私に分かることでしたら何なりと」

「…それじゃあ駄目ですよ。解けなければ、貴女はそこで終わりです」

また意味の分からない発言に、目を白黒させている少女に構うことなく、美しい女性は懐から大き目の木箱を取り出し、それを丁重に開けた。
箱の中には4本のビンが入っている。左から赤色の大きなビン。青色の小さなビン。紫色の小さなビン。茶色の中くらいのビンの順で、それぞれ木の仕切りで区分けされている。中には、それぞれ何かしらの液体が入っているようだ。
女性は穏やかな声で【質問】をした。

「このビン、とある魔道士さんの所から無断で持ってきたんです。
 中に入っているのは、うち2本が薬、1本が猛毒、そして1本が霊水。
 もちろんラベルが貼ってあったのですが、どうやらラベルに仕掛けがしてあ ったようで、文字が消えてしまったんですよ。
 そこで、あなたに聞きたいんですが。
 どのビンに何が入っているのか、お教えいただけませんか?
 ただし、ビンには触れないでくださいね。危ないですから」

「…何か、覚えていることは?」

「そうですね…猛毒のビンは小さなビンには入っていませんでした。
 それと、薬のビンの大きさは2本とも違いましたね。
 …たしか、茶色のビンには薬は入っていなかったと思います。
 そうそう。この霊水は特殊なもので、猛毒が近くにあると無くなってしまう とか。例えビン越しでも隣り合っていれば無くなってしまうそうです」







――さて、答えは解ったかな?
――解答はこの下だよ。
























―――準備はいいかい?それでは、始めようか―――
















――解答――

まず、ビンの位置を確認しておこう。
左から

赤(大) 青(小) 紫(小) 茶(中)

の順だね。

じゃあ、次にわかった情報をまとめてみよう。
・猛毒のビンは小さなビンではない――すなわち、「赤」か「茶」である
・2本の薬のビンの大きさは異なる
・薬は「茶」に入っていない。つまり、「茶」は猛毒か霊水。
・全てのビンに中身がある以上、霊水と猛毒は隣り合わせでない

最後に、ビンの内容を確認。
「薬」が「2本」「猛毒」が「1本」「霊水」が1本

さて、それじゃあ謎解きといきますか。
注目するのは「薬のビンの大きさは異なる」そして「茶色に薬はない」という情報だね。
上の情報を当てはめれば、薬の入ったビンのサイズは「大」と「小」。この組み合わせしか在り得ない。
小さなものはともかく、大は一本しかないので、これで確定。
すなわち、「赤色のビン」の中身は「薬」である。ってね。
赤が消えた以上、消去法で「茶色のビン」の中身が「猛毒」だということは説明する必要もないよね。
それに「霊水が猛毒に隣り合っていない」以上、霊水は紫色のビンには入っていない。だから「青色のビン」には「霊水」が入っていると考えられる。
最後に残ったのは「紫色のビン」と「薬」の組み合わせ。
条件に矛盾してないし、これも正しい。
まとめると。
「赤色のビン」の中身は「薬」
「青色のビン」の中身は「霊水」
「紫色のビン」の中身は「薬」
「茶色のビン」の中身は「猛毒」

もちろん、あくまで上の解答は一例だから、他の方法もあるかもしれないね。
けれど、解答はこれ以外に存在しないはずだよ。
……ふふ、あなたにはちょっと簡単すぎる問題だったかな?